示談担当者ならこう選ぶ。車両保険の選び方
ここでは車両保険の種類についてご説明します。
「車両保険をつけたいけど、どれを選べばいいのかわからない」
という人もこれを読めば判断できるようになっていますので、ぜひ目を通してください。
選び方を間違えたせいで失敗したエピソードも紹介します。
車両保険の3つのタイプ
車両保険のタイプは大きく分けて3つあります。
「一般タイプ」と「車対車ワイド」、「車対車」です。
保険会社によって呼び名が違いますが、中身はほとんど一緒です。
ここでは一番シンプルな名前で呼ぶことにしますね。
まずはこちらの表をご覧ください。
一般 | 車対車ワイド | 車対車 | |
---|---|---|---|
車と接触事故 | ○ | ○ | ○ |
飛び石などによる被害 | ○ | ○ | × |
ガラスの損傷 | ○ | ○ | × |
いたずら・盗難 | ○ | ○ | × |
火災 | ○ | ○ | × |
水害 | ○ | ○ | × |
当て逃げ | ○ | × | × |
モノとの接触(自損事故) | ○ | × | × |
地震・戦争・噴火 | × | × | × |
この表は、各車両保険の補償範囲をまとめたものです。
ご覧の通り、「一般タイプ」はほぼすべてのリスクに対応しています。
それに対して「車対車ワイド」当て逃げやガードレールに接触した、などの単独自損事故には対応していません。
電柱にぶつけた、車庫にぶつけた、というケースでは支払いの対象外です。
さらに、「車対車」になると相手が車の時以外はすべて支払い対象外となってしまいます。
ちなみに「車対車ワイド」や「車対車タイプ」は「相手が車であれば補償される」のが原則ですが、相手の車のナンバーや所有者の住所氏名などが判明している時に限られます。
相手の車が事故後、逃げてしまった場合は支払われません。
保険料は「一般タイプ」が一番高額で、「車対車タイプ」はかなり割安になります。
車両保険が下りない具体例
先ほど紹介した補償範囲の表には載っていないケースで車が破損することもあります。
その中で車両保険が下りないケースを「一般タイプ」と「車対車ワイド」を比較して紹介していきます。
「一般タイプ」、「車対車ワイド」どちらも下りない場合
エンジントラブル等による「故障」
車両保険は故障には対応していません。
「エンジンが焼け付いた」、「電気系統が故障してエンジンがかからない」、「オーディオが壊れた」、といった『事故とは関係ない故障』については一切保険金が支払われません。
ただし、故障が原因で走ることができなくてレッカーを呼んだ場合は、レッカー特約やロードサービス対象となりますので、レッカー代のみ保険金が支払われます。
故障して自走ができない状態になったらまずは、自動車保険のロードサービスに電話をしてみましょう。
参考:『示談担当者ならココを見る。ロードサービスの選び方。』
無免許、飲酒、酒気帯び運転など
車両保険は運転資格を持っていなければ保険金は支払われません。
その他にも、運転してはいけない病気にかかっている時、危険ドラッグなどの薬物により意識が朦朧としている状態に起こした事故も保険金の支払い対象外です(対人・対物は支払われます)。
タイヤのパンク
路上で釘を踏んでタイヤがパンクした場合、タイヤの修理代は対象外となります。
しかし、不思議なものでタイヤ以外にも傷が及んでいる場合にはタイヤの修理代も支払われます(「一般タイプ」の場合のみ)。
故意に起こした事故
被保険者(保険金を受け取る人)が故意に起こした事故については、保険金が支払われません。
「腹が立ったからバンパーを蹴飛ばしてしまった」、とか「夫婦喧嘩で自分の車にいすを投げつけたとか」、そういう場合には保険は下りないので気をつけてくださいね(実話です)。
「車対車ワイド」では保険金が下りない場合
一般タイプよりも狭められている車対車ワイドでは、保険金が下りないケースが急増します。
相手がわからない当て逃げ
車対車ワイドは車と衝突した事故では支払い対象となる、はずなのですが「相手の車の所有者、登録番号が判明した場合に限る」という但し書きがあります。
だから、当て逃げでは保険金が支払われません。
もちろんスーパーの駐車場のドアパンチも対象外です。
当て逃げの被害にあって保険請求をしたのに保険が使えないと宣告され「当て逃げはされるし、保険は使えないし踏んだり蹴ったりね!」とお怒りになるお客様は結構いらっしゃいます。
「モノ」にぶつけた
こちらも保険はおりません。
ガードレールや木、電信柱にカーポートといった「モノ」にぶつけてしまった場合、「車対車ワイド」の車両保険は使えないのです。
よくある事故なので、運転に自信がない人は「一般タイプ」に加入しておきましょうね。
車両保険が下りる具体例
先ほどは車両保険が下りない例を紹介しましたが、今回は下りる例を紹介します。
意外と下りる例もあるので、覚えておいて損はないです。
「一般タイプ」、「車対車ワイド」どちらも下りる場合
台風や大雨で車が水没した場合
「水害による被害」は支払い対象です。
大きな台風や大雨のニュース映像が流れると、必ず映っているのが浸水してしまった車達です。
タイヤ付近までなら大丈夫ですが、ボンネットを超えたあたりまで水につかるとほぼ全損と言っていいでしょう。
しかも等級は「1等級ダウン事故」扱いだから、保険料の値上がり期間は1年で金額も少額。
被害に遭ったら忘れずに事故報告をしましょうね。
車上荒らしにあった場合
警察に届け出ていれば支払い対象です。
車上荒らしの場合、警察への届け出が必須なので被害に遭ったらすぐに警察に通報しましょう。
車上荒らしの被害で補償されるのは、車の本体や付属品への被害だけです。
車に乗せていた荷物が盗まれたとしても車両保険では補償されません。
泥棒に窓ガラスを割られて車内の純正カーナビとシート、ハンドル、ブランドバッグ、パソコンが盗まれた場合支払い対象となるのは、カーナビ、シート、ハンドル、そして窓ガラスの修理代です。
ボディーに傷が入っていればその修理代も支払われます。
ブランドバッグとパソコンは車両保険からは支払うことができません。
※身の回り品特約に入っていればそちらから支払われます。
飛んできたトタン屋根が車の屋根に落下
車対車ワイドは「モノ」との接触では支払い対象外、とお話ししましたが「飛来物」や「落下物」により損傷を受けた場合は支払い対象となります。
飛来物の代表的なモノといえば石ですね。
田舎では草刈機が飛ばした石がぶつかった、という事故報告が珍しくありません。
飛んできたモノであれば、どこにぶつかっても保険はおります。
表題のトタン屋根ももちろんオッケーです。
飛んできたモノって結構判断しやすいのですが、「落下物」の判断は私たちも毎回迷います。
例えば、大きなクレーン車が倒れてきて車にぶつかった場合は、落下中のモノとの接触とみなされ支払い対象になります。
鳥のフンをすぐに掃除したのに塗装が剥げてしまった場合も対象です。
ただし、鳥のフンを放置していて変色してしまったモノはNGです。
窓ガラスへの損傷
車対車ワイドでも、窓ガラスが壊れた場合は「ガラスのみ」保険がおります。
例えば、飛び石によるフロントガラスへの損傷(これは飛来物との接触にもあたりまうのでダブルでオッケーですね)、や事故で大破してガラスも壊れてしまった場合です。
自分の子供が野球をしていてフロントガラスを割ってしまったという場合も保険金が支払われます。
子供が車に石でいたずら書き
私が担当した事故で「子供がアンパンマンの絵を書いてしまった」というものがありました。
毎日色々な事故を見ますが、こんなほのぼのとした気分になる事故報告は初めてです。
アジャスターさんが写真を撮りに行ったところ、小さなお子さんが一生懸命書いたであろうアンパンマンの絵が運転席のドアに書かれていました。
私たちはその写真を見てみんなでしばらく癒されました。
実はこれも車両保険の支払い対象です。
車対車ワイドでも大丈夫。
自分の子供じゃなくても、嫌がらせによる落書きも保険金が支払われます。
ただし車の所有者である大人がわざと落書きをした場合は支払われませんのでお気をつけください。
いや~、車両保険って複雑ですね。
保険が下りるんだか下りないんだか、事故ってみないとわからない気がしてきた。。
確かに複雑よね。
だから保険の代理店さんもたまに間違うことがあるの。
本当は支払い対象になるのに「支払えない」と言ってしまったり、逆に支払えるのに「対象外」と言ってしまったりすることがあります。
すべての代理店さんがそうではないですが、事故を起こして判断に迷うものがあったらダメ元で「保険会社本体」に確認を取るのをお勧めします。
結局のところ、車両保険って必要?
車両保険に入ると保険料が高くなるため入るのを迷ってしまいますが、私は入ることをお勧めします。
理由はどんなに運転に自信のある方でも「盗難」「当て逃げ」「相手が無保険(任意保険未加入)のもらい事故」は避けることができないからです。
「盗難」と「当て逃げ」に関しては、犯人が見つからなければ泣き寝入りするしかありません。
「相手が無保険車(任意保険未加入)のもらい事故」に関しても、相手に支払う意思と財産がなければ泣き寝入りすることもあります。
私も示談の現場で、車両保険に入っていない方が泣き寝入りしてしまうケースを何度も見てきましたので、予算の範囲で車両保険に入ることをおススメします。
次の項目では置かれている立場によってどのタイプの車両保険が合っているか紹介しますので、参考にしてみてください。
タイプ別おすすめ車両保険
ここでは私がたくさんのお客様を見てきた中で学んだ、タイプ別おすすめ車両保険を紹介します。
「一般タイプ」に向いている人
下記の方は一般タイプにすることをおススメします。
- 若葉マークの方
- 60歳以上の方
- 自動車ローンがある方
- 車以外に移動手段がない方
- 仕事で車が必須の方
「若葉マークの方」と「60歳以上の方」
私の経験上、「初心者」と「60歳以上の方」は小さな事故も大きな事故も多いです。
特に多いのが車庫入れや狭い道での単独事故。
擦り傷程度の損傷ですが修理代は10万円以上かかることがほとんどです。
若葉マークの方や60歳以上の方は経済的にもものすごく余裕がある、という訳ではないので一般タイプに入っていた方が安心です。
自動車ローンがある方
「自動車ローンがある方」は車両保険に入っておかないと、大きな事故にあった時にローンプラス修理代で大変な目にあいます。
特に全損事故で自分に過失が多い場合は、修理をあきらめて廃車にすると、車がないにもかかわらず無い車ためにローンを払い続ける事になるので目も当てられません。
「車以外に移動手段がない方」と「仕事で車が必須の方」
交通の便が悪い地方に住んでいる方は、生活する上で車が必須です。
そんな方が車両保険に入らずに事故を起こしてしまし、車の修理代や買い替え代を支払う余裕がなければ生活が困難になります。
また、「仕事で車が必須の方」だと仕事がストップしてしまい死活問題になります。
このような方は補償範囲が広い一般タイプに入る事をおススメします。
車対車ワイドに向いている人
- 保険料を節約したい人方
- 購入して5年以上の方
「保険料を節約したい人方」は車の年式によって一般タイプから車対車ワイドに切り替えるのがおススメです。
例えば新車や年式が新しい車ですと車の価値は高いので一般タイプにしておいて、ある程度年式が古くなった時点(購入して5年程度)で車対車ワイドに切り替えるという具合です。
もちろん予算に余裕があるのでしたら一般タイプのままがベストですが、できるだけ節約したいという人でしたら、この方法がおススメです。
「車対車」「車両保険なし」に向いている人
- 車以外に移動手段がある人
- 年式が古い車の方
- お金に余裕のある方
車以外に移動手段がある人
交通の便のいい都会にお住まいの方で、仮に車がなくなっても電車や路線バスなどでもいいという方は「車両保険なし」でもいいと思います。
年式が古い車の方
年式が古い車は車両価値が低いので、下りる保険額が少なくなります。
そのため車両保険に入るメリットがあまりなくなるので、お金に余裕があれば「車対車」、余裕がなければ「車両保険なし」でいいと思います。
お金に余裕がある方
常に新車に買い替えられるくらいに「お金に余裕がある方」(うらやましい。。)は「車両保険なし」でも問題ありません。
失敗!車両保険選びを間違えたせいで酷い目に・・
ここでは私が見た中で一番気の毒な方をエピソードをご紹介します。
登場人物は、高橋さん(仮名)24歳のOLさんです。
高橋さんはカーブを曲がりきれずにガードレールにぶつかってしまいました。
スピードが出ていたため車は大破、自走不可です。
車両保険は「車対車ワイド」だったので、ガードレールの修理代のみを対物で支払うことになります。
しかし、ふと高橋さんの契約車両欄を見て絶句。
なんと1ヶ月前に納車されたばかりの新車だったのです。
恐る恐る高橋さんに連絡をしました。
私「(前略)ガードレールは対物賠償責任保険で対応できますので、今後は私と市役所さんでお話しさせていただきますね。お車は車両保険が車対車ワイドのため支払い対象外となっておりますのでご了承ください」
高橋さん「え・・車両保険でないの?」
私「はい、車対車ワイドといって、主に車との衝突や飛んできたものとの接触などの場合に保険金が支払われるタイプにご加入なので、今回は対象外なんです」
高橋さん「だって支払い対象の表を見たらたくさん丸が付いていたから、だいたいの事故は大丈夫なのかと思ってた・・」
私「車対車ワイドは、自分がモノにぶつけてしまった場合はお支払いできないんですよ。きっとその表にも書いてあったと思いますよ」
高橋さん「そうですか・・・。社会人になって2年、ボーナスに一切に手をつけずにお金を貯めて現金で買った新車なんです・・。修理するお金なんてもう残っていません。どうすればいいんですか・・・」
高橋さんは我慢できなくなって泣き出してしまいました。
聞いていた私も胸が締め付けられる思いです。
後からゆっくり聞いてみたところ、まだ社会人2年目で、一人暮らしをしているので生活費が足りず、自動車保険料を節約するために車対車ワイドで契約していたそうです。
結局 高橋さんは修理のためにお金を借りたそうです。
悲惨だ。悲惨すぎる。。
修理代を考えると一般タイプにしておけば、まだ安かったでしょうね。
でも一般タイプの保険料高いからなぁ。
私、この時は代理店系の会社に勤めてたから高橋さんに教えれなかったんだけど、通販系の自動車保険なら一般タイプでも安く入れるんだよね。
そっかー。通販系は保険料が格安だから一般タイプでも安く済むんだ。
そうなの。
でも通販系にもメリットとデメリットがあるから、『示談担当者ならこう選ぶ。後悔しない自動車保険の選び方』を参考に選んでみてね。
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