弁護士に頼んだ後はすぐに裁判になるの?
一般的に弁護士=裁判と思われているところがあります。
しかし、実際には弁護士に依頼したからと言って、すぐに裁判になるとは限りません。
弁護士は、何も裁判ばかりをその仕事内容にしているわけではありません。
依頼者の代理人になって相手方と示談交渉をすることもありますし、調停の代理人として裁判所での調停にかかわることもあります。
仲裁手続の代理人もしますし、契約書のチェックやアドバイス、作成などの仕事も受けています。
交通事故の損害賠償請求事件の場合も、弁護士は相手方保険会社との示談交渉や、相手方との調停、仲裁手続などの代理人をしてくれます。
(調停や仲裁については後程ご説明いたします。)
そのときの状況やその事件の内容によって、もっとも適切な手続を選択して相手方への損害賠償請求を進めていくのです。
よって、弁護士に依頼しても裁判になるとは限りません。
通常は、弁護士が間に入って相手方保険会社と示談交渉するところから始まります。
損害賠償請求の流れ
弁護士に交通事故の損害賠償請求を依頼すると、その後の手続の流れはどうなっていくのでしょうか。
どのような場合にどの手続が適しているのかも知っておく必要があります。
そこで、以下では損害賠償手続の進み方と状況に応じた手続選択の方法について説明します。
示談交渉
まずは相手方の任意保険会社との示談交渉から始まります。
示談交渉とは、特に裁判所などの機関を利用することなく、当事者同士で話し合いをすることです。
自分で相手方保険会社と直接交渉をしてもうまく進まない場合や、相手方の保険会社の主張に納得できない場合などには弁護士に示談交渉の代行を依頼することも出来ます。
では、示談交渉の最中に弁護士に依頼した方が良いタイミングはどのような場合でしょうか。
事例1
たとえば、通院期間が長引いてくると、相手方保険会社が治療費の打ち切りをしてきて、「そろそろ治療は打ち切って、示談金の話し合いをしたい」などと言ってくることがあります。
このような場合、実際には、相手方の保険会社が治療の打ち切りを打診してきても、それに従うことなく治療は完治するまで続けるべきです。
しかし被害者本人が対応していると、本当にその言葉に従って治療を辞めて示談金の話し合いに入って良いのかどうかわからないことがあります。
そして、自分ではうまく対処出来ずに不利な条件で示談してしまうことがあります。
そこで、このような場合には、弁護士に示談交渉の代行を依頼した方が良いのです。
事例2
また、治療が終了した段階で後遺障害の認定請求をすることがあります。
(詳しくは「後遺障害って何?」をご覧ください。)
後遺障害の認定請求は自分でも出来ますが、手続がよくわからなかったり、認定内容に不服があって異議申し立てをしたい場合などもあります。
このような場合にも、弁護士に対応を相談して、場合によっては手続を依頼すると良いでしょう。
調停
相手方の保険会社との示談交渉がうまく行かない場合には、いくつかの手続選択の可能性があります。
そのうちの1つに「調停」があります。
調停とは、裁判所において、裁判官や調停委員を間に介して相手方保険会社と話し合う方法です。
調停手続を弁護士に依頼することも可能です。
調停を利用すると、間に第三者である調停委員が入ってくれるので、当事者同士ではうまくいかなかった話し合いがスムーズにすすむことがあります。
また、専門知識を持った裁判官や調停委員が介在することによって、適切な内容の解決を図ることも出来ます。
調停のメリットとデメリット
調停のメリットは、間に調停委員が入ってくれるので、直接話し合っても解決できなかった場合でも話し合いが進みやすくなることです。
また、かかる期間も短くて済みます。
さらに、手続が簡単で自分でも利用しやすいことです。
調停のデメリットは、当事者に合意を強制出来ないので、結局は解決できない可能性がある事です。
当事者が納得せずに手続が終わってしまうと、それまで話し合ってきた結果がすべて無駄になってしまいます。
調停では、気に入らなければ当事者は和解する必要がないのです。
仲裁
交通事故の損害賠償請求の手続としては、交通事故紛争処理センターなどの仲裁手続もあります。
仲裁とは、交通事故についての専門知識を持っている仲裁員(弁護士)が間に入って和解の手続をすすめたり、審査によって解決方法を決定してもらう手続です。
調停と異なり、当事者同士で話し合いがつかない場合には、審査を申し立てることによって、損害賠償金の金額や内容を決定してもらうことが出来ます。
仲裁手続では、損害賠償金の計算基準の中でも高額な弁護士基準が採用されます。
また、弁護士に依頼しなくても、被害者が自分で手続することも可能です。
加えて、通常訴訟よりも手続が早く進んで問題が解決出来るなどのメリットがあります。
ただ、仲裁員を選ぶことが出来ないので、その力量などに疑問がある場合にも交代してもらうことは出来ません。
審査が出た場合に異議を出して拒否することも出来ますが、審査が無効になると、今まで手続をすすめてきたことがすべて無駄になってしまうことなどにも注意が必要です。
もちろん、仲裁手続を弁護士に依頼することも出来ます。
仲裁のメリットとデメリット
仲裁のメリットは、交通事故に詳しい弁護士などの仲裁員(紛争解決委員)が間に入って話し合いをすすめてくれることです。
また、当事者同士に争いがある場合には、仲裁員が具体的な和解案を提示してくれます。
この和解案を双方が受け入れれば、交通事故に関する紛争が解決出来ます。
仲裁を利用すると、裁判よりも問題が早く解決出来る点もメリットです。
さらに、仲裁は弁護士を利用せずに自分でも手続出来るので、費用がさほどかからないメリットもあります。
仲裁のデメリットは、提携していない保険会社の場合にはあまり強制力が働かないことです。
また、仲裁案が出ても、それを当事者が受け入れなければ結局仲裁が成立せず、手続がむだになってしまいます。
仲裁機関の種類と特徴
仲裁機関には、いくつかあります。
代表的なものが「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」です。
これらは、主に弁護士が中心になって運営しています。
提携している保険会社も多く、仲裁手続のノウハウも蓄積されているのでスムーズに話し合いがすすみやすいです。
いわゆる「老舗」の仲裁機関とも言え、信頼性があります。
次に、日本損害保険協会のそんぽADRがあります。
これらは、日本の損害保険会社が加盟して運営している仲裁機関です。
加盟している損害保険会社が相手方の場合には扱いやすいですが、それ以外の場合にはあまり強制力がはたらかないというデメリットがあります。
さらに、一般社団法人保険オンブズマンによる仲裁手続もあります。
これは、主に外資系の損保会社が中心になって運営している仲裁機関です。
ただ、この機関についても、加盟している保険会社以外の事件では解決が難しく、あまり日本ではメジャーになっていません。
以上の仲裁機関の中でも利用しやすいのは日弁連の交通事故相談センターか、交通事故紛争処理センターです。
これらの機関は歴史もあり、手続のノウハウもしっかりしていて提携している保険会社もたくさんあるので、利用すると解決につながりやすいです。
参考サイト
調停と仲裁の違い
調停と仲裁の違いは、それが裁判所を利用するかどうかです。
調停は裁判所を利用して行う法的な手続ですが、仲裁は民間の団体が実施している和解あっせんの手続です。
また、調停は裁判官と裁判所の調停委員が間に入って話し合いをすすめる手続であるのに対して、仲裁ではその仲裁機関によって異なる紛争解決委員が間に入ります。
紛争解決委員は弁護士であることが多いですが、そんぽADRなどの場合には弁護士でないこともあります。
また、調停では必ずしも和解案が提示されるとは限りませんが、仲裁では具体的な和解案を呈示してもらうことが出来ます。
調停や仲裁なんて知らなかったなー
でも、お互いが納得しないと解決しないんですよね?
だとすると調停や仲裁で解決する確率って低いんじゃないですか?
私の経験だと、調停の解決率はだいたい6割くらい、仲裁の場合には7~8割くらいね。
へぇー、意外と高いんですね。
間に誰かに入ってもらえると冷静になれたりするものよ。
だけど対立が激しいと、裁判までもつれこむわね。
裁判
損害賠償請求をする場合、示談交渉や調停、仲裁を利用しても解決出来ないことがあります。
そのような場合には、裁判を利用して解決しなければなりません。
裁判では、裁判所の裁判官に損害賠償の内訳や金額を判断してもらいますが、その判断は終局的なものになります。
裁判手続は、非常に複雑で専門的なので、被害者が自分で手続をすすめることは困難です。
裁判で損害賠償請求をする場合には、弁護士に依頼することが必須です。
裁判のメリットとデメリット
裁判を利用するメリットは、問題を終局的に解決出来ることです。
裁判所の決定に異議があったとしても、さらに別の機関に審査を訴えていくことなどは出来ません。
また、裁判官が弁護士基準で損害賠償の認定をしてくれるので、損害賠償金の金額は高くなります。
さらに、法律のプロである裁判官が判断してくれるので、適正な解決内容が実現出来るメリットもあります。
裁判のデメリットは、費用と期間と手間がかかることです。
裁判を利用する場合、自分で手続きすることはほとんど不可能なので、弁護士に依頼する必要がありますが、その場合数十万円以上の費用がかかることが多いです。
また、裁判を利用すると、8ヶ月~1年以上の期間がかかることが普通です。
さらに、裁判では主張や証拠の整理などが必要で、非常に複雑で手間がかかります。
証人尋問などで裁判所に行かなければならないこともあります。
適切な手続選択をする
示談交渉がうまくいかない場合には、調停か仲裁、裁判手続にすすみます。
これらのうち、どれを利用しなければならないという決まりはありません。
それぞれの手続の特徴やメリットデメリットをふまえて、当事者が判断することになります。
その事件での保険会社との対立の程度や内容によっても、適切な手続が異なってきます。
たとえば、損害賠償金の金額が大きく、当事者の対立が激しい場合には、調停の話し合いや仲裁の和解あっせんでは解決が困難なことが多いので、はじめから裁判を利用します。
逆に対立が穏やかな場合や、賠償金が少額な事案などでは調停や仲裁が向いているでしょう。
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