意外と知らない、年齢条件の適用範囲
年齢条件とは契約している車を運転する人の年齢を限定するかわりに、保険料を割引するシステムです。
35歳以上という年齢条件がついている場合は、20歳の人は運転できないと思いますよね。
しかし、実は年齢条件には「適用範囲」があって適用範囲外の人は年齢条件を外れていても補償されるのです。
一般の方はあまり知られていないので、保険請求をしそびれている人も少なくありません。
私が担当したお客様も知らずに多額の自己負担をするところでした。
これを読んでみてもし心当たりがある人は保険会社に相談してみましょう。
普通の車両保険請求のはずが・・
後輩「先輩、新しい事故届いてますよ」
私「はーい」
私は事故報告書と契約内容の確認書を受け取って、報告された事故の概要に目を通しました。
契約者=運転手のAさん(女性)が運転中に電柱にぶつけてしまって車の後ろがへこんだ、という事故報告です。
私たちは事故の概要を確認するとともに、契約内容と照らし合わせて保険金が支払うことができるかどうかもチェックします。
Aさんの保険は「運転者限定なし、年齢条件35歳以上」という条件が付いていました。
Aさんは40歳なので問題なしです。
いつも通りAさんに電話して事故内容を確認してから修理工場に電話します。
Aさんはすでに修理工場に車を持って行ってくれていました。
ここまでは珍しくもない自損事故でした。
別事故発覚!
私「Aさんの車、入っていますか?」
修理工場「ああAさんの車あるよ、前と後ろがへこんでるよ」
私「えっ?今回の事故は電柱にぶつけたっていう後ろの傷だけだと思いますよ」
修理工場「そうそうAさん、ちょっと前に事故を起こしたとかで前もへこんでるんだよ。これは保険じゃないとか言ってたなあ」
私「そうですか。とりあえずこれからアジャスターが見に行きますね。手をつけないで待っていてください」
修理工場「了解です」
数カ所ぶつけてあったそのうちの1つだけ保険を使う、というのは珍しいことではありませんが何となく気になったのでアジャスターに見に行ってもらうことにしました。
アジャスター「ただいま。Aさんの車見てきたんだけど、前の損傷は別事故でいいんでしょ?」
私「そう聞いてます。これからAさんに確認してみますけど、前の損傷はどんな感じなんです?」
アジャスター「いやあ、結構かかりそうだよ。後ろは15万円ぐらいだけど前は40万円はかかりそう。それに追突事故を起こしたらしくて被害者もいるらしいよ。なんで保険を使わないんだろう」
私「そうですよね。保険料が上がるって言ってもそれを自己負担するよりも全然マシですよね。後ろじゃなくて前を使ったほうが得ですよね。相手の賠償もあるだろうし。ちょっと聞いてみます」
私はすぐにAさんに電話をしました。
年齢条件の落とし穴
私「A様、さっき車を確認させていただいたのですが、前の部分の修理は保険を使わなくてもよいのでしょうか?修理工場さんから追突事故と聞いたのですが。保険料のアップよりも自己負担の方が高額になると思いますので使った方が良いのでは?」
Aさん「実は、姪が遊びに来て運転していたら追突しちゃったんですよ。けど私の保険は35歳限定でしょ?姪は21歳だから保険金が出ないもの。しょうがないから自分で車の修理も相手の車の修理代も支払わなきゃいけないんです」
私「えっ?ちょっと待ってください。姪御さんとは同居されているんですか?」
Aさん「いいえ、隣の県に住んでいて偶然遊びに来ていたんです」
私「であれば、A様の自動車保険は姪御さんの事故でも使えますよ。年齢条件は同居の家族や使用人にしか適用されないんです。A様には家族限定はついていないので、姪御さんは運転していても問題ありませんし」
Aさん「えっ!!??本当に!?嬉しい!!ちょっと待ってて!すぐ姪たちに連絡するから」
この仕事をしていてこんなに喜んでもらえたのはこの時だけです。
電話をしている私のほうまで笑ってしまうほどAさんは大喜びしていました。
結局、姪御さんが起こした追突事故も保険を使うことになり、事故報告をしてもらって私が担当しました。
姪御さんが起こした事故の支払い保険金額は車両保険が45万円、対物が60万円だったので、Aさんは105万円もの高額自腹を免れたことになります。
Aさんが自分で電柱にぶつけなければこの追突事故は保険請求されることなく、Aさんたちが自腹で負担することになっていました。
まとめ
Aさんの場合は気付いてあげられてよかったですが、こんな例は実はたくさんあるのでは?と思います。
「年齢条件は同居の親族、使用人のみに適用される」っていう私たち示談担当者にとっての常識は、一般の方にとっては常識ではないのです。
過去に、年齢条件に合致していないからと保険請求を諦めたことがある人は、一度契約を見直した上で保険会社に相談してみてくださいね。
ただし、家族限定や本人限定、配偶者限定などがついている場合はそちらで制約がかかりますので、年齢条件は適用されなくても補償されないのでご注意ください。
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