T字路の事故では、過失割合はどうなるの?
ここではT字路で事故が起きた場合の過失割合をご紹介します。
一口にT字路と言っても、色々な形態があります。しっかりと確認してから、同じ事故状況の過失割合を見てくださいね。
直進車と右左折車の過失割合
まずは直進車と、T字路を出ようとしている車との過失割合です。
同じ幅の道路
事故状況はこちらです。
それぞれが同じ幅の道路の場合でAが直進、Bが右左折をしようとして接触した場合です。
基本の過失割合は『Aは30%、Bは70%』となります。
同じぐらいの道幅で、標識やセンターラインがない道路に適用されます。
一方が明らかに広い道路
Aの通る道が広く、Bの道が狭い場合に適用されます。
この場合の基本割合は『Aが20%、Bが80%』です。
この事故は、時として示談担当者たちを悩ませます。
「明らかに広い」が曲者なのです。
判例タイムズ(事故の判例集)には「明らかに広い」の定義は書いてありますが、数字として明記されている訳ではありません。
「交差点の入り口で客観的にかなり広いと感じれば、こちらの過失割合が適用される」と書いてあります。
だから、保険会社同士の交渉では「道路幅が1.5倍以上の差があれば適用する」ことが慣習になっています。
6メートルの道路と4メートルの道路であれば、これが適用されるけど、6メートルと4.2メートルであれば、適用されないのです。
これって納得できますか?
できませんよね。
判例タイムズに数値の明記がない上に、損保同士で決めた慣習によって、過失が10%も変わってくるのですから。
多くのお客様、そして私たち示談担当者も、1.5倍に満たない道路幅だとしてもこちらの判例を適用してほしい、と交渉します。
しかし、ほとんどの場合は1.5倍以上の差がなければ20:80は適用されません。
1.5倍未満をこの判例に適用してしまうと、歯止めがきかなくなり秩序が乱れるからです。
このように、私は上司や先輩示談担当者に諭されました。未だにちょっと納得がいかない部分でもあります。
一方に一時停止の標識有り
今度は、右左折車側に一時停止の標識有り、直進車にはない、と言う事故状況です。
基本割合は『Aが15%、Bが85%』です。
一方が優先道路
Aが走っている道路が優先道路の場合の過失割合です。
『Aが10%、Bが90%』となります。
優先道路とは、センターラインが引いてある道路や、優先道路の標識がある道路を言います。
優先道路を走行している場合は、交差点での徐行、減速義務はありません。
そのため、直進車Aに有利な過失割合になっています。
修正要素
Aにプラス10%
- Bの明らかな先入
※「一方に一時停止の標識有り」の事故形態には適用されません
- Aの著しい過失
Aにプラス15%
- Bが一時停止後進入
※「一方に一時停止の標識有り」の事故形態のみ適用されます
Aにプラス20%
- Aの重過失
Bにプラス10%
- Bの著しい過失
Bにプラス20%
- Bの重過失
どの事故形態を見ても、右左折車の過失割合が大きくなります。
道路交通法では、右左折する車は直進車の進行を邪魔してはならない、と決められているので、過失割合も大きくなるのです。
右折車同士の事故
次は、T字路交差点を右折する車同士の過失割合をご紹介します。
こちらの事故形態は双方右折同士なので、過失割合が拮抗するかと思いきや、左方優先や標識などによって、Aに有利な過失割合になります。
早速ご覧ください。
同じ幅の道路
こちらの基本割合は『Aが40%、Bが60%』になります。
同じ幅の場合は左方が優先とみなされ、Aが40%と若干優遇された過失割合になります。
一方が明らかに広い道路
先ほどの『直進車と右左折車の過失割合 一方が明らかに広い道路』の中でもお話ししたように、慣習として、1.5倍以上の差があるときに適用されます。
基本割合は、『Aが30%、Bが70%』です。
一方に一時停止の標識有り
Aに一時停止の標識有り、Bに標識なしの場合の基本割合は『Aが25% Bが75%』です。
一方が優先道路
Aが優先道路を走行していて右折する場合の基本割合は『Aが20% Bが80%』です。
修正要素
Aにプラス10%
- Bの明らかな先入
※「一方に一時停止の標識有り」の事故形態には適用されません
- Aの著しい過失
Aにプラス15%
- Bが一時停止後進入
※「一方に一時停止の標識有り」の事故形態のみ適用されます
Aにプラス20%
- Aの重過失
Bにプラス10%
- Bの著しい過失
Bにプラス20%
- Bの重過失
いかがですか?
同じ右折同士でも、Tの上の部分を走っている車が優先されましたよね。
皆さんもT字路を右折する時は、この優先関係を頭に入れておいてください。
意外とこれを知らないお客様が多いので、過失割合を説明すると驚かれます。
T字路で激突!あちこち大破
坂野さん(仮名)と波田さん(仮名)の事故です。
坂野さんはセンターラインの入ったT字路を直進、波田さんは脇道から右折しようとしていました。
坂野さんは制限速度ギリギリの60キロで交差点に進入。波田さんは40キロほどでしたが、左右をほとんど確認せずに右折してしまいました。
二人とも気付いてブレーキを踏むも、ほとんど減速することなく衝突してしまいました。
スピードが出ていたため双方の車は大破。物理的全損です。
それだけではありません。
坂野さんの車は、ガードレールにぶつかった後、電信柱に激突。電信柱は倒れて民家に直撃。
波田さんの車は、スピンしながら反対側のガードレールに衝突後、後続直進車に衝突。
奇跡的に二人とも無傷でしたが、事故現場は見るも無残な大惨事です。消防車に救急車、パトカーが駆けつけ、現場は騒然としました。
私は出勤中にその事故現場に遭遇し、「この事故の担当にだけはなりたくない」と思い目をそらしました。
こんな大事故を担当したら丸一日、初動対応に追われて他の仕事は一切できなくなると思ったからです。
しかし、私の必死の祈りもむなしく、デスクの上には坂野さんと波田さんの事故報告書が乗っていました。
私は波田さんの担当です。
第三者損害(間接的に被害を与えてしまったモノや人たちのことです)だけでも、片手では数え切れないほどです。
ガードレールの所有者である県、電柱の管理者である電気会社、電線を通している通信会社、民家の所有者、後続の直進車。
今回のように、お互いに過失が出る事故で第三者の損害が出ている場合は、過失が大きい側の保険会社がすべての対応をしなければなりません。
初日は、過失割合について考える暇もありませんでした。
翌日、落ち着いてから波田さんに基本の過失割合のお話をしたところ、深く反省した様子でした。
「それはもうその通り、僕が90%悪いです。なんでちゃんと確認しなかったのか、と後悔ばかりで・・」
さすがに、事故直後の大惨事を目の当たりにしているので、何の反論も出ませんでした。
お相手の坂野さんも、10%の過失割合をすんなりと受け入れて頂けました。優先道路を走行していてたとはいえ、時速60キロ近く出してしっかりと安全確認ができていなかった、という自責の念があったようです。
しかし、この事故の場合、いくら先に過失割合が決まっても、すべての第三者損害の復元が完了し、示談ができるまでは解決できません。
特に厄介なのが民家です。
この件では民家が復旧するのに半年かかりました。修理費用は民家だけで1500万円です。
(参考:「信号機、踏切など修理代が高い物をランキングにしたらこうなった」)
結局、すべての第三者損害が示談できたのは、事故から10ヶ月経過した時のことです。
関係者全員の免責証書と示談書が完成し、署名捺印が終わった時は感無量でした。
波田さんは、事故現場が毎日通る通勤ルートだったので、すべての修理が完了するまで肩身が狭かったとおっしゃっていました。
特に民家の前を通る時は、きりきりと胃が痛くなったようです。
みなさんは波田さんのようにならないために、一時停止ではしっかりと止まって左右を確認しましょうね。
まとめ
T字路での事故は、T字路の状況によって大きく過失割合が変わってきます。
まずはしっかりと道路の標識などを確認した上で、それにあった過失割合を探してくださいね。
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