自宅の車庫は対物保険で直せる?

私が担当したAさんのお話です。

Aさんが新車を購入し、それを機会に自動車保険を見直すことにしました。

Aさんは保険のことは詳しくないので、ディーラーのAさんの担当をしていた営業マンに「新しい車で慣れなくてぶつけたりするかもしれないから、いろいろな事故に対応できるような保険にしてください」とだけお願いしていたようです。

営業マンは新車販売がメインの仕事ですが、自動車保険も扱っています。

お客様のために「車両保険」に新車特約、「対人対物は」もちろん無制限、個人賠償責任特約弁護士特約などの特約がばっちりつけました。

Aさんは「この車には保険がばっちりついているから大丈夫!」と安心して新車に乗り、自宅に帰りました。

そしてAさんは慣れない新車を車庫にぶつけて、新車もカーポートも傷がついてしまいました。

慣れない新車をぶつけてしまう事故は、決して珍しくありません。

新車はかすりきずでしたが、カーポートは支柱が曲がってしまい、修理が必要な状態です。

Aさんは落ち込みながらも、新車をもういちどディーラーに持って行きました。

「車の修理代は車両保険から支払われますし、カーポートは対物賠償責任保険から支払われますから大丈夫ですよ」

営業マンさんはAさんにそう伝え、私たちのところに事故報告書を送ってくれました。

ところが、担当者さんの頭からすっぽり抜けていたのが「自宅車庫特約」です。

自宅車庫特約とは、自宅の車庫に車をぶつけた時に車庫の修理代を支払ってくれる保険です。

私は「大変!この人、自宅車庫特約ついていないから車庫の修理代は支払われない!」と思って慌てて営業マンに電話しました。

「営業マンさん、Aさんの保険には自宅車庫修理特約がついていないのでカーポートの修理代は支払われないんですよ」

営業マン「えっ!?だって対物から支払われるんでしょ?」

いいえ、対物は『他人のものを壊した時に支払われるもの』なので、自分が所有しているものや自宅は支払われないんですよ

営業マン「そうだったの?どうしよう、お客さんに保険で出るって言っちゃったよ」

「そうですか。私からご説明しましょうか?それとも営業マンさんからお話ししますか?」

営業マン「うーん。僕のお客さんだし、僕が言ってしまったことだから僕が責任を持って説明します」

「わかりました。ご理解が難しかったら言ってくださいね。車の修理代はちゃんと支払われるので、また車の写真撮りに行きますね」

営業マン「わかりました。宜しくお願いします」

結局Aさんは自分で車庫の修理代を支払い、改めて自宅車庫特約に加入しました。

営業マンさんは、保険って難しいよね、としみじみとおっしゃっていました。

車のスペシャリストであるディーラーの営業マンさんの中でも、自動車保険に詳しくない人はいらっしゃいます。

勉強会で一生懸命勉強されていますが、詳しい支払い要件などは分からないことが少なくありません。

これはディーラーの営業マンだけではなく、保険会社の営業部署に勤めている社員も同じです。

保険金支払い部門の社員にとっては常識なことでも、営業担当は全く知らないことが結構あるんです。

だから営業マンさんだけを責めることはできませんが、Aさんは気の毒でした。

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