直進車と右折車の事故の場合、過失割合はどうなるの?
今回は直進車と右折車の事故、通称「右直事故」の過失割合をご紹介します。
実は私、右折が苦手なのでなるべく右折をしないような道を通っています。
交通量が多い交差点だと右折するタイミングがつかめず、ずっと待っていて矢印信号が出てやっと右折開始できる迷惑ドライバーなのです。
右折した側はどうしても過失割合が大きくなると思うと、思い切って曲がれなくなりました。
示談担当者の職業病でしょうか(笑)
右折自動車と直進自動車が接触した場合
事故状況はこちらです。
双方が青信号で交差点に進入し、接触してしまいました。
基本過失割合は「A20%:B80%」です。
修正要素
Aにプラス10%
- Bがすでに右折していた
- Aが渋滞している交差点に進入した
- Aの15キロ以上の速度違反
- Aの著しい過失
Aにプラス20%
- Aの30キロ以上の速度違反
- Aの重過失
Bにプラス5%
- Bの早回り右折
- Bの大回り右折
Bにプラス10%
- Bの徐行なし
- Bの直近右折
- Bの合図なし
- Bの著しい過失・重過失
基本的には直進車優先ですが、右折車がすでに右折を完了している場合や、直進車が渋滞している交差点に入った場合には、直進車の過失割合が加算されてしまいます。
交差点を直進するときは、右折車の動向や交差点の交通状況をよく見ておきましょうね。
ローカルルール登場は過失割合に影響する!?
私たちは右直事故、と呼んでいるこの事故形態は決して珍しいものでもありませんし、そこまで揉めずに解決できます。
しかし、あることが蔓延している地域では一筋縄では解決しないことがあるのです。
それが「ローカルルール」。
「名古屋走り」や「松本走り」、「山梨ルール」、「伊予の早曲がり」といった言葉を聞いたことがありますか?
これらはすべてご当地運転とも言うべきその土地ならではの運転慣習です。
名古屋走りと言えば、「黄色まだまだ赤勝負」という言葉に代表されるような信号軽視の運転です。
それ以外にも強引な右折、割り込み、進路変更、などが有名な名古屋走り。
私も初心者マーク時代に名古屋に行った時涙目でした。
(もちろん真面目な運転をしてる方もいらっしゃいます。)
名古屋走りほど有名ではありませんが、松本走り、山梨ルール、伊予の早曲がりも厄介なローカルルールです。
松本走りと山梨ルールは似ていて、どちらも「右折優先」という認識が根底にあります。
特に松本では「信号が青になったと同時に右折する」ですとか「直進車が接近しているのに急ハンドルで右折する」などの危険な右折が日常茶飯事なのです。
そんなルールが存在する地域で「右直事故」が起きたら過失割合はどうなってしまうのでしょうか?
早速私の担当した案件をご覧ください。
松本市に観光に出かけた大野さんの事故
私が担当していた大野さん(仮名)は休日に松本市に観光に出かけました。
そこで、交差点を青信号で直進していたところ急に対向車線の木村さん(仮名)が曲がってきて衝突。
大野さんは青信号だったため減速をしておらず、また木村さんも勢いよく右折をしてきた為、双方の車は大破、全損でした。
お互いに怪我がなかったのが不幸中の幸いです。
私「今回はお怪我がなくて何よりでしたね。事故状況をお聞かせいただけますか?」
大野さん「家族で松本に旅行に行ってたんですよ。青信号でまっすぐ走っていたら、急にウィンカーを出していなかった木村さんの車がすごい勢いで曲がってきてドッカンです。びっくりしましたよ。ウィンカーを出していなかったから、まさか曲がるとは思いませんでした。これって私にも過失が出るんですか?」
私「そうですね。基本的には若干は出てくると思います。この事故形態の基本の過失割合は大野様(直進車)が20%、木村様(右折車)が80%です。木村様がウィンカーを出していなかったことや、スピードを緩めていなかったことをお認めになれば大野様の過失がもう少し少なくなる可能性はあります」
大野さん「そうなんですね!それなら大丈夫です。私の車はドライブレコーダーついているんです。すぐメールしますね」
なんと素晴らしいことに大野さんの車にはドライブレコーダーが付いていました。
これで、木村さんの「合図なし」や「徐行なし」が確認できれば交渉はかなり有利です。
ドキドキしながら私はアジャスターさん(車の専門家)や同僚を呼び集めてドライブレコーダーの映像を確認しました。
すると、大野さんの言うとおり相手の木村さんはウィンカーも出さず、減速もせずそのままのスピードで右折をしています。
「うわぁこりゃひどいね」
アジャスターさんたちは口々に文句を言っていました。
「10:90」や「5:95」でも交渉可能なほど有利な証拠です。
私は久々の「勝ち確定勝負」だと思いながら、朗らかに木村さんの保険会社に連絡しました。
木村さんの保険会社担当者は長野県松本市の拠点です。
私「大野さんの担当の結城と申します。宜しくお願いします。今回の事故状況は右直事故で間違いないですか?」
松本市の示談担当者「そうですね。基本はそちらが20%、うちが80%ですね」
私「はい。ただ若干修正をお願いしたいんですが、木村さんの『ウィンカーなし』と『徐行なし』がドライブレコーダーで確認できているんですよ」
松本市の示談担当者「聞いていますよ。木村さんがご自身でもおっしゃっていました。けど修正どころか基本も納得していなくて・・」
私「えっ?合図なしも徐行なしも認めてるのに、基本の過失が納得できないってどういうことですか?」
松本市の示談担当者「それが、こっちって松本走りって言って、右折が優先って思ってる人が多いんですよ。特に高齢の方は右折車がいたら譲るべきだっていう考えちゃう傾向があって・・。木村さんも『大野さんが譲るべきだったから過失は50:50だ!』って言ってて聞かないんです」
私「そんなあ。大野さんだってできれば0主張したいけど、判例ならしょうがないから若干なら過失を認める、っていう空気なのに50:50なんて言ったら怒っちゃいますよ」
松本市の示談担当者「ですよね。木村さんは私たちがなんとか説得します。修正要素も受け入れざるを得ない状態なので10:90で話をしてみます。ちょっと時間をもらえませんか?」
私「わかりました。お待ちしてますね」
電話を切った私はすぐにアジャスターさんに質問です。
私「『松本走り』って知ってます?」
アジャスターさん「ああ知ってるよ。ガンガン右折するやつでしょ?」
私「そうなんですよ。この案件、松本市の事故なんですけど相手が右折を優先すべきとかいって過失を50:50主張してるんです。相手損保が説得してくれるみたいだけど、実際のところローカルルールってどうなんですか?」
アジャスターさん「ローカルルールなんて全く過失には関係ないよ。松本走りとか伊予の早曲がりって言うけど、事故を起こしたら全国共通の過失割合に決まってんじゃん」
私「ああ良かった」
結局、松本市の示談担当者さんとアジャスターさん、そして課長まで揃って木村さのご自宅で説明をし、なんとか「10:90」で納得してもらえました。
今回は私は特に苦労しませんでしたが、松本市の担当者さんは「もう勘弁して」と笑いながらこぼしていました。
運転のローカルルールは存在するものの、実際に事故を起こしたら過失割合には有利になるどころか不利になりますので、よろしくないローカルルールには従わないほうが良いですよ。
右折バイクと自動車が接触した場合
お次はバイクと自動車の接触事故です。
事故状況はこちら。
「自動車(B) 30%:バイク 70%」です。
修正要素
Bにプラス10%
- Bの15キロ以上の速度違反
- Bの著しい過失、重過失
- バイクが既に右折している
- バイクが渋滞している交差点に進入
Bにプラス20%
・Bの30キロ以上の速度違反
バイクにプラス5%
・バイクの合図なし
バイクにプラス10%
- バイクが徐行無し
- バイクの直近右折
- バイクの早回り右折、大回り右折
- バイクの著しい過失、重過失
自動車同士の過失割合よりも、バイクの方が若干有利に設定されています。
しかし、これはバイクが怪我をして診断書が発行されている場合に適用される過失割合なので、バイクが怪我をしていない場合や病院に行っていない場合は自動車同士の判例が適用されます。
まとめ
このように右直事故では、右折した側が完全に不利な過失割合になってしまいます。
日本では「直進車優先」が大原則なので、どんなご当地ルールがあろうとも直進車を優先し、無理な右折はしないようにしましょう。
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