交通事故に遭った時、弁護士費用特約は役に立つの?

弁護士バッチ

当事者双方に過失がある事故の場合、お互いの保険会社同士がその後の示談交渉をするのが通常です。

しかし、もらい事故などのように「自分に一切過失がない被害事故」の場合、保険会社は示談交渉を代行できません。
そのため、被害者自身が相手側と直接 示談交渉や賠償金請求をしなければいけないのです。

「弁護士法」という法律によって、「弁護士以外の人間は報酬を受け取る目的で示談交渉を行ってはならない」と決まっているからです。

ただ、示談交渉を被害者自身が行わなくてはいけないのはあまりにも大変です。
そういった交通事故被害者を救済するために、弁護士費用特約が生まれました。

現在、弁護士費用特約の加入率は50%~70%ですが、利用率は1%未満とも言われています。

利用されないのは、下記のような理由によります。

  • 特約が使えるケースなのに、使えないと自己判断してしまっている
  • 特約がついていることを認識していない
  • 自分が特約をつけていなくても、家族の特約を利用できる事を知らない

ここでは弁護士費用特約の上手な利用の仕方を紹介しますので、積極的に活用していきましょう。

具体的な補償内容と保険金

弁護士の相談料

法律相談費用

交通事故対応を弁護士に依頼する時には、本格的に依頼する前に、まず「どんな交通事故なのか」を伝えてから相談しましょう。

弁護士は相談内容を聞いたうえで、引き受けるかどうかを判断します。
この相談にも法律相談料がかかります。

弁護士費用特約に入っていると、この法律相談費用が1事故につき、1名に対して「10万円」が限度額として保険金が支払われます。

弁護士ではなく、司法書士や行政書士に依頼する書類作成費用も補償対象です。

その他の費用

弁護士が正式に依頼を引き受けると「着手金」「報酬金」「訴訟費用」などの費用がかかります。

弁護士費用特約が適用されると、これらの費用については1事故につき、弁護士1名に対して『300万円』を限度額として保険金が支払われます。

300万円を超えた分は自己負担となりますが、私の経験上、300万円を超えることは稀です。

*保険会社、保険契約によって補償額が異なることがありますので、ご自身の保険約款や保険会社の担当者や保険代理店に確認してみて下さい。

誰が特約の対象になるの?

対象範囲

弁護士費用特約は被保険者(保険契約者の場合が多いです)だけでなく、下記のように広い範囲で補償されます。

対象範囲

  • 被保険者
  • 配偶者(妻・夫)
  • 被保険者と配偶者の同居している親族(一緒に住んでいる両親や子ども)
  • 被保険者と配偶者の別居している未婚の子ども
  • 被保険者の車(契約自動車)に乗っている搭乗者(親族以外の方でも対象)

「補償の重複」に注意しよう

上記の通り、弁護士費用特約の対象範囲はとても広いです。
そのためよく起きるのは「補償の重複」

例えば、あなただけではなく家族の誰かも弁護士費用特約に入っている場合、補償が重複してしまいます。

また、自動車保険だけでなく「火災保険」や「医療保険」にも、弁護士費用特約が存在します。他の保険で重複していないかも確認してみて下さい。

弁護士費用特約のメリットとデメリット

メリット

賠償金(慰謝料など)の額が上がる

賠償金(慰謝料など)を計算する際には3つの基準が存在します。
それは「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つです。

それぞれ金額が異なり、多い順に並べると 『弁護士基準 > 任意保険基準 > 自賠責基準』となります。

例えば後遺障害慰謝料の場合は、下記の通りになります。

等級 自賠責保険基準 弁護士基準
14級 32万円 110万円
13級 57万円 180万円
12級 93万円 290万円
11級 135万円 420万円
10級 187万円 550万円
9級 245万円 690万円
8級 324万円 830万円
7級 409万円 1,000万円
6級 498万円 1,180万円
5級 599万円 1,400万円
4級 712万円 1,670万円
3級 829万円 1,990万円
2級 958万円 2,370万円
1級 1,100万円 2,800万円

* 任意保険基準の場合はそれぞれの保険会社が独自に設定しているので、保険会社によって異なります。

この表を見れば弁護士基準の方が自賠責基準より2~3倍近く高い額になるということがわかると思います。

しかし一般の方が保険会社相手に弁護士基準で賠償金を要求するのはかなり困難です。

そのため弁護士費用特約を利用して弁護士に交渉を依頼し、弁護士基準を適用してもらうことで、賠償金をアップできます。

少額の損害賠償請求でも利用しやすい

「交通事故の弁護士費用はどれくらい?」でもお話ししましたが、弁護士に支払う報酬は高額です。

日本弁護士連合会によると交通事故の弁護士費用は「80万円前後」が相場となっています。

(参考:日本弁護士連合会│市民のための弁護士報酬の目安

そのため加害者に請求できる損害賠償金が少額の場合、弁護士費用の方が多くなり、結局マイナス(費用倒れ)になることもあります。

しかし弁護士費用特約を使えば、弁護士費用は保険会社が負担してくれます。
そのため、損害が少額のケースでも全額を被害者本人が受け取り、プラスにすることができます。

適正な示談結果を得られる

交通事故の被害に遭い、その上、自分で示談交渉するのは大変負担が重いです。

また相手となる保険会社は示談交渉に慣れているため、無知につけこまれ不利な内容で示談に持ち込まれる可能性もあります。

裁判になった場合は平日に出廷しなければならないため、仕事をしている方は会社を休まなければなりません。

弁護士費用特約を利用して、交渉のプロである弁護士に依頼すれば、示談交渉や裁判の負担がなくなり、また適正な内容で示談できる可能性が高まります。

デメリット

デメリットがあるとすれば、弁護士費用特約分の保険料が上がることです。
ただし「上がる」といっても、年間1,000円~1,500円程度です。(保険会社によって保険料は違います)

弁護士費用特約を使うと等級は下がるの?

等級のアップダウン

自動車保険を使うと等級が下がるというイメージがありますが、弁護士費用特約を使うだけなら等級は下がりません。

そのため、翌年の自動車保険料も上がりません。

「搭乗者傷害保険」「人身傷害保険」の適用でも同じです。
これらはいわゆる「ノーカウント事故」扱いになります。

等級が下がり、自動車保険料が上がるのは「対人」「対物」「車両保険」を使用した場合です。

参考:『等級が下がる事故と下がらない事故』

弁護士費用特約が「使える場合」と「使えない場合」

使える場合

弁護士特約が使える場合

私の経験上、下記に当てはまる場合は弁護士費用特約を使用すると示談交渉が有利になることが多いです。

  • もらい事故(過失が0)場合
  • 怪我を負った場合
  • 相手の保険会社から治療費の打ち切りを迫られている場合
  • 正当な理由があるのに過失割合を修正してもらえない場合
  • 相手が無保険(無保険車)だった場合

もし上記に当てはまる事故でしたら、「交通事故に強い弁護士の無料相談(24時間受付)」で相談してみて下さい。

車の運転中の事故以外でも使えるケース

例えばバイクの運転中の事故や、契約自動車以外(例えば友人の車に乗っていた)の事故も対象です。

見落としがちですが、タクシーや路線バスに乗っている最中で事故に遭った場合も対象となります。

またご自身やご家族に限って、歩行中や自転車乗車中に起きた自動車との事故も対象になります。

自動車保険の特約なのに歩行中も対象になるんですか?
「自動車に関わる事故の被害者」を対象としているので、対象になります。

このことはあまり知られていないので、歩行中の交通事故の被害に遭われているのに弁護士費用特約を使用しないままの方って結構多いです。

交通事故に遭った際はどのような形態であっても、一度 保険会社に対象になるかどうか問い合わせてみてみましょう。

参考:『弁護士費用特約を実際に使ってみたケース』

使えない場合

弁護士費用特約が使えない場合

使えない場合はいくつかありますが、代表的なものは下記の3つです。

  • 自分が加害者の場合
  • 根拠のない主張の場合
  • 自動車以外事故の場合

自分が加害者の場合

例えば、止まっている車に追突してしまった、というような過失が自分に100%ある場合は弁護士費用特約を使用することができません。

あくまで自動車事故の「被害者」のための特約だからです。

ただ、相手に過失が10%など多少ある場合は使用できる場合がありますので、保険会社に問い合わせてみて下さい。

根拠のない主張の場合

過失交渉で弁護士に依頼して有利になるのは、客観的に見て主張に妥当な根拠がある場合です。

そうでなければ弁護士に依頼をしても有利にはなるとは限りません。

その理由は、日本の裁判所は法律的な判断を行い、「判例(裁判例))」を重視しているからです。

過失割合が発生する事故では、裁判では似たような事故形態の過去の判例に基づき、法律的な判断によって判決を出します。

1割、2割の修正をすることはありますが、それも過去の判例に基づいて行われます。

正当な法的根拠がなければ、弁護士でも過失交渉を有利にすることは難しいのです。

自動車以外事故の場合

自動車が関連しない事故は対象外になります。

例えば歩行中に自転車にぶつかった、犬に噛まれたなどです。

あくまで弁護士費用特約は「自動車」が関わっている事故が対象となります。

上記のような日常生活による被害事故の補償を受けるには、別途「日常事故弁護士費用特約」(保険会社によって商品名は違います)が必要になります。

弁護士費用特約を使うかどうか迷ったら

人によって状況は様々で、弁護士費用特約が使えるかどうか迷うこともあります。

わからない時には保険会社に電話して、今置かれている状況を説明し、弁護士費用特約の使用が認められるか聞いてみましょう。

「交通事故に強い弁護士の無料相談(24時間受付)」もありますので、こちらも活用してみて下さい。

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