交通事故の弁護士費用はどれくらい?
交通事故に遭った場合には、相手方の任意保険会社との間で、慰謝料などの損害賠償金についての示談交渉をしなければなりません。
示談交渉手続を自分ですることも出来ますが、とっても大変です。
弁護士に依頼すると、獲得できる損害賠償金が増額されるなどのメリットがあります。
交通事故の弁護士費用は、どのくらいかかるものなのでしょうか。
今回は、交通事故の弁護士費用の相場について解説します。
弁護士費用の種類と相場
弁護士費用は、「弁護士報酬」と「実費」を合わせたものを言います。
「弁護士報酬」には、「法律相談料」と「着手金」、「報酬金」や「手数料」などがあります。
「実費」には、「収入印紙代」や「交通費」、「通信費」や「コピー代」などが含まれています。
ちなみに、平成16年3月31日までは、弁護士会が定めた報酬基準で額が決定していました。
その後は弁護士が自由に料金を決めることができるようになり、弁護士個人や事務所ごとに多様な額が提示されるようになったのです。
現在でも、古い報酬基準をもとに弁護士費用を算出するケースがあります。
(参考:「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」)
「法律相談料」
「法律相談料」とは、依頼する前に、弁護士に交通事故の内容について相談する際にかかる費用のことです。
いったん依頼してしまえば、その後は打ち合わせなどをしても法律相談料はかかりません。
「法律相談料」は、次にある「着手金」や、いわゆる「手付金」ではないことにご注意ください。
つまり、成果を得られた際に弁護士へ支払う「報酬金」に充当されることはありません。
法律相談料の相場
弁護士の法律相談料は「時間制」になっています。
通常は30分5000円(+消費税)の金額が相場です。
ただし、最近では法律相談料が無料の弁護士事務所が増えています。
「着手金」
「着手金」とは、弁護士に示談交渉手続を依頼した際、当初にかかる費用のことです。
わかりやすく言えば、「依頼料」のようなものです。弁護士の初動費用と考えても良いでしょう。
着手金は、弁護士と契約した当初に支払う必要があります。そして支払った着手金は、原則として返金されることはありません。
着手金の相場
着手金の相場は、だいたい20万円前後です。
弁護士費用は現在自由化されているので、各弁護士事務所が自由に定めることが出来ます。
よって、依頼する事務所によって開きがあり、安い事務所も高い事務所もあります。
着手金無料の弁護士がいる
交通事故の示談交渉の依頼をする場合、最近では着手金が無料の弁護士が増えています。
着手金がかからないので、依頼当初にお金を用意する必要がなく、手元にお金のない依頼者にとっては助かることがあります。
ただ、着手金無料とは言っても、事件が解決した場合の成功報酬金が高めになっているケースが多いので、注意が必要です。
たとえば、着手金は無料にしておきながら、成功報酬金について
基本報酬20万円+増額分の20%の報酬
と定めている事務所も多いです。
すると、結局は着手金を当初に20万円支払ったのと同じ金額の支払いが必要になります。
むしろ、増額分の成功報酬金が10%の事務所に依頼した方が、かかる費用の総額は安くなることになるのです。
このように、着手金無料の弁護士が、必ずしも結果的に得になるとは限らないので注意が必要です。
「報酬金」
「報酬金(成功報酬金)」とは、交通事故の示談交渉で決着がついた際に、その解決内容に応じてかかってくる費用のことです。
一般的に、獲得金額が多ければ多いほど成功報酬金の金額は高くなります。
事務所によっては、最初の損害賠償額との差額ではなく、保険会社が提示した金額から増えた分で、成功報酬を計算するところもあります。
万が一、完全に敗訴となった場合、報酬金は発生しません。
回収できた金額は一度すべて弁護士へ届き、ここから報酬金が差し引かれた分が、依頼した方に振り込まれます。
報酬金の相場
成功報酬金も弁護士事務所によってさまざまですが、だいたい「増額できた分の10%~20%」程度であることが多いです。
増額できた分というのは、弁護士が介入したことによって上がった分の損害賠償金ということです。
たとえば、弁護士が介入する前に任意保険会社から300万円を呈示されていたけれども、弁護士が介入したことによって賠償金額が500万円に上がったら、増額分は200万円ということになります。
その10%が報酬金になる場合、報酬金額は200万×10%=20万円です。
「実費」
「実費」とは、交通事故の示談交渉などの事件処理にかかる実際の費用のことです。
たとえば、通信費用や郵便の費用、交通費などです。細かいところでは、コピー代やお金を振り込んだ際の手数料も含まれます。
また、裁判となった場合の経費を弁護士が一旦建て替え、依頼者に後から請求する場合もあります。
「実費」は、もし弁護士に依頼せず自分で取り組んだとしてもかかる費用のこと。そういう意味では、厳密には弁護士費用とは異なります。
ただ、弁護士に手続を依頼する場合には、当然かかる実費も支払わなければなりません。
そのため、実費の金額も弁護士費用に入れて考えるのが一般的です。
ちなみに「実費」は、依頼する弁護士さんによっては、大きく金額が変化することも。
意外かもしれませんが、ちゃんと理由があるんです。それは後述しますね。
実費の相場
交通事故の示談交渉には、実費はさほどかかりません。任意保険会社との通信費や郵便の費用、調査などに行った場合の交通費程度です。
また、後遺障害認定のためなどで、病院からカルテや診断書、診療報酬明細書などを取り付ける必要があります。
その際には数千円~数万円程度の実費がかかることがあります。
(後遺障害については「後遺障害って何?」をご覧ください。)
よって、ケースにもよりますが、実費の相場は1万円~数万円程度と考えると良いでしょう。
また、「出張日当」と呼ばれる、弁護士が弁護活動のために出張した際に発生する費用もあります。
事務所によっては、月単位で請求するところもあります。
日当はインターネットのサイトでも記載がないところが多いので、契約する際には確認しておいてくださいね。
以上のように、弁護士費用はかなりの幅があります。
大変とは思いますが、なるべくなら複数の弁護士を比較するのが一番です。
弁護士費用のポイント
さて、ここまで相場をお伝えしましたが、費用はなるべく抑えたいものですよね。
ここでは、自分でできる、押さえておくべきポイントをお伝えします。
成功報酬
一番額が大きく変わるのは、成功報酬の割合です。
上述しましたが、割合が数パーセント増減するだけでも、数十万円差が出てくることだってあります。
条件によって割合が異なることもありますので、しっかり確認しておきましょう。
費用倒れを防ぐ
「費用倒れ」とは、弁護士に依頼したことで増えた賠償金よりも、かかった費用が上回ってしまうことです。
事故の内容によっては、費用倒れの可能性が低いケースと高いケースがあります。
物損事故では、高額損害はあまり発生せず、費用倒れが起きる場合があります。
しかし人身事故、特に後遺障害が起きたケースでは、弁護士基準が適応されます。
弁護士に依頼するメリットは大きくなるでしょう。
依頼・契約する前には、具体的な事情を弁護士へ伝え、費用倒れになるかを確認してくださいね。
弁護士費用特約
「弁護士費用特約」は、今まで私が何度もご利用をすすめてきた、任意保険のオプションです。
保険会社によって内容は異なりますが、こちらを利用すれば、弁護士費用と相談料が一定の額(300万円が相場)まで保障されます。
実際にかかった費用よりも見返りが少ない、「費用倒れ」がなくなります。
また、弁護士を紹介してくれる保険会社もあり、探す手間が省けるといった利点があります。
あまり知られていませんが似た特約として、「個人賠償責任特約」「日常事故弁護士費用特約」「日常事故解決費用特約」などがあります。
これらはそれぞれ対象範囲が違いますので、ぜひ一度ご自分の保険約款を確認してみてくださいね。
詳しくは、「弁護士費用特約で示談交渉は本当に有利になるの?」をご覧ください。
また、自動車保険だけでなく、傷害保険や火災保険に付帯されているケースもあります。
さらに、ご家族の保険で利用できる場合も。一度確認してみましょう。
ただ、この弁護士費用特約を利用した場合、料金が通常と異なる体系になる法律事務所もあります。
しっかり確認をとることをお勧めします。
相談料が無料、もしくは額の低い弁護士を選ぶ
最近は「相談料が無料」という弁護士が増えています。そういった弁護士を選ぶことで、費用を抑えることができます。
特に事故の内容が複雑であればあるほど、依頼前でも相談時間は長引いてしまうでしょう。
電話相談などでもこれは同様ですので、賢く選びたいですね。
自分と近い場所の弁護士を選ぶ
できるだけ、自分が住んでいる場所に近い地元の弁護士を選ぶことで、「実費」を抑えることができます。
というのも、遠方の弁護士に依頼することで、交通費や日当が高額になってしまうからです。
また、書類の送付などでも、実費はかさんできます。
交通事故に強い弁護士が地元にいれば、心強いですね。
弁護士に相談するタイミング
弁護士費用は、弁護士に相談するタイミングによっても異なってきます。
報酬金は、「増額した分の〇〇%」と計算することが通常です。
そのため、相手から示談金の提示を受ける前と後では、「増額分」とみなされる額に差が出てきます。
例えば、相手から示談金の提示を受ける前に弁護士へ依頼すると、示談金の額が全て「増額分」として報酬の計算に入ります。
逆に示談金の額が提示された後で依頼すると、「最終的な示談金の額」から「提示された額」を引いた分が、「増額分」になるのです。
とはいっても、そのタイミングを見計らうのは中々難しいこと。
さらに、弁護士へ早期に依頼することで、適切なアドバイスを受けられるのも事実です。
事故に遭った際のストレスもありますし、事故ケースによってもタイミングは異なります。
まずは弁護士に相談して、それから依頼のタイミングを決めるというのも、ありだと思いますよ。
違約金がかかる途中解約
弁護士を途中で解約してしまうと、「違約金」としてそれまでかかった費用を請求される場合があります。
これは、相談料や着手金が無料でも同様です。
解約が考えられるケースは様々。
弁護士によって得意不得意があったり、対応に時間がかかったり。依頼した側も弁護士側も人間なので、意見の対立が起きることもあるかもしれません。
なるべくなら、そういったケースは避けたいもの。
「とりあえず依頼する」といった安易な契約はせず、しっかり担当の弁護士と面談してください。
また、保険会社に相談したり、インターネットで探す手間を惜しまないようにしましょう。
法テラスを利用する
「法テラス」(日本司法支援センター)とは、法トラブル解決のために、国が設立した組織です。
利用には条件がありますが、弁護士費用を支払えない場合に、一時的に立替えをしてくれる「民事法律扶助」という制度があります。
「経済的に余裕のない方が法的トラブルにあったときに、無料法律相談や必要に応じて弁護士・司法書士費用などの立替えを行っています。」
(引用:日本司法支援センター法テラス「かんたん解説「法テラス」より)
こちらは「安くなる」というよりも、「弁護士費用が支払えないので頼めない」という方を救う制度です。
全国各地に事務所があり、面談も可能です。他にも相談ダイヤルや、24時間受付のメールもありますので、お困りの際は利用してみてください。
交通事故の弁護士費用の具体例
たとえば、任意保険会社から損害賠償金額として100万円の呈示を受けていたけれども、弁護士に依頼したことによって、入通院慰謝料が20万円増額され、後遺障害慰謝料が70万円増額された。
そのため、結果的に90万円の損害賠償金の増額となったケース。
損害賠償金全体が190万円になったということです。
この場合、弁護士の着手金が20万円、報酬金が10%として9万円(90万×10%=9万円)、実費が1万円かかったとします。
すると、弁護士費用の合計は30万円になります。
結局、依頼者の手元に返ってくるのは、190万-30万=160万円になります。
依頼者は、弁護士に依頼したことによって、弁護士費用を差し引いても60万円分得をしたことになります。
もう一例ご紹介します。
たとえば重篤な後遺障害が残った事例で、任意保険会社からは1000万円の示談金で呈示を受けていたとします。
この場合、弁護士に依頼したことによって、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などの金額があがり、結果的に2000万円の損害賠償金が受けられたとします。
この場合、弁護士費用は着手金20万円、成功報酬金が10%ととして100万円(1000万円×10%=100万円)、実費が2万円だったとします。弁護士費用の合計は122万円になります。
すると、弁護士費用を差し引いても依頼者の手元に返ってくるのは2000万円-122万円=1878万円です。
依頼者は、弁護士に手続を依頼したことによって、878万円もの利益を得られることになります。
弁護士費用を相手に請求できる?
「弁護士費用を相手方に請求したい!」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし残念ながら、そうそう簡単に請求できるものではありません。
正式に弁護士費用を請求できるのは、裁判しかないのです。
民事訴訟で勝訴した場合、請求額に対し裁判所が認めた金額の10パーセント程度を請求できるのが、一般的な相場でしょう。
(これを「認容額」といいます。)
ただ、事故が刑事事件として立件されている場合は、可能性があります。
刑事事件になった際の処分は、加害者の資産から被害者に賠償したことが重視されることがあるからです。
例えば、下記のようなケースもあります。
「弁護士費用を含めるかたちで、示談金として加害者が賠償する。その代わり、被害者が嘆願書の作成に協力する」
嘆願書は、「加害者の刑罰を寛大にしてほしい」という内容です。
ただ、基本的に裁判は半年以上もかかることがありますので、時間がかかってしまうのが前提となるでしょう。
まとめ
弁護士費用は、自由化に伴って様々な価格設定がされています。その中で、できるだけ安く抑える方法をお伝えしてきました。
日本弁護士連合会(日弁連)には、「弁護士の報酬に関する規定」があります。
「弁護士等の報酬は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なものでなければならない。」
(引用:日本弁護士連合会「弁護士の報酬に関する規定」)
つまり、法外な額を請求しない規定があるのです。
事故のあとで損害賠償の交渉は、とてもストレスに感じるもの。
そんな中、賠償金の増額のみならず、相談に乗ってくれる弁護士の存在は心強いですね。
安心を得る意味でも、弁護士に依頼するメリットは高いでしょう。
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