交通事故で車が全損になった場合に、請求できる保険金のまとめ
そもそも全損とは?
交通事故での「全損」には、大きく分けて2種類があります。
- 物理的全損
- 経済的全損
『物理的全損』とは事故で車が大破し、修理できない場合をいいます。
『経済的全損』とは「修理代」が「車の時価額」を上回った状態のこと。つまり、修理するよりも同じ車種・同じ年式、同程度の走行距離・車検残の中古車を買った方が安いケースです。
例えば
修理代(50万円) > 時価額(40万円)
という場合です。
(ちなみに修理代の方が時価額より小さい場合は「分損」といいます)
この場合は自分に過失がなくても、相手の保険会社からは時価額(40万円)しか支払ってもらえません。
車の時価額は保険会社の社員、主にアジャスターという車の専門家が算定します。
算出の根拠はオートガイド社の「レッドブック」という本です。
車種・年式・グレードごとに、市場に出回っている中古車価格の平均をまとめています。毎月発行されるので、事故時の価格が算出できます。
「私の車は走行距離が少ないんですけど」
「車検を取ったばかりなのですが」
そういう声に対応するために、走行距離や車検の残月数によって時価額はプラスされる仕組みです。
逆に走行距離が多いと、数万円単位でマイナスされます。
ほとんどの保険会社は全損となった場合、レッドブックを基準として初回の時価額を提示します。
しかし、レッドブックには5年から6年前の車までしか掲載されていません。
年式の古い車はどうなるの? というと基本は「新車価格の10%」です。
新車で150万円の車は15万円となります。
たったの10%ですか!?
そんなんじゃ車買い替えられないですよ……。
そうなの。
だから全損事故ってすごく揉めるの。
でもやり方次第では、「全損した車の時価額をアップさせる」ことや「もらえるお金を増やす」ことができるわ。
あまり知られていないことも多いので、泣き寝入りせずに ぜひ活用してみてくださいね!
保険からもらえるお金
自分の自動車保険からもらえる保険金
車両保険
全損の場合は「車両保険金全額」が支払われます。具体的には「協定保険価額」といって、同じ型の車を中古車で購入した場合の市場価格です。
これは保険会社がレッドブックなどを用いて、中古車市場価格の平均を基に決めています。
それから「全損保険金」(「全損臨時費用保険金」「全損時諸費用保険金」など保険会社によって名称が異なります)を受け取ることができます。
多くの保険会社は車が全損になった場合、車両保険の金額にプラスして10%から20%の「臨時費用保険金」を支払います。
例えば車両保険の金額が100万円、臨時費用は10%だった場合、110万円が支払われるのです。
臨時費用保険金の有無や金額は、契約時に決められています。
また全損になった車をレッカーするために要した費用も、車両保険から別途支払われます。
新車特約
「新車特約」をつけている場合は、設定された金額の範囲内であれば負担なしで、新車を購入できる費用が支払われます。
また新車特約には、新車を登録する際に必要な費用を負担してくれる「登録諸費用保険金」がセットになっていることが多いです。
買替時諸費用特約
「買替時諸費用特約」をつけている場合は、車を買い替える場合に手数料や登録費用などの買い替えにかかる諸費用のため、車両保険金額の15%(上限40万円)が支払われます。
ただし、先述した「全損保険金」や「新車特約の登録諸費用保険金」と重複して受け取る事はできませんので注意しましょう。
全損超過修理特約(車両超過修理費用特約)
「全損超過修理特約(車両超過修理費用特約)」をつけている場合は、車両保険金額プラス30万円~50万円の修理代が支払われます。
ただし、実際に修理をしなければ受け取ることができないので注意しましょう。
代車費用特約
「代車費用特約」に加入していれば、事故で車両が使用できない期間、レンタカー費用の支払ってもらうことができます。
ただし、1日当たりのレンタカー費用の上限は、契約時に設定した金額となり、期間は基本的に「使用開始から30日間」となるので注意が必要です。
契約内容によってはレッカー搬送が発生したときのみ、レンタカー費用を請求できる場合などもありますので、事前にしっかり確認しておきましょう。
相手の保険からもらえる保険金
対物賠償責任保険(対物保険)
相手にも過失割合がある場合は、相手の対物保険から車の時価額の相手の過失割合分が支払われます。
ここでいう「車の時価額」というのは、前述した「レッドブック」に掲載された中古車市場の相場です。
例えば相手が70%悪い場合は、時価額の70%が支払われます。
相手全損超過修理費用特約(対物超過修理費用特約)
もし、相手が「相手全損超過修理費用特約」(対物超過修理費用特約)に加入していて、時価額プラス50万円の範囲内で修理ができる場合は、修理をする前提で修理代を受け取ることも可能です。
全損になった場合の代車費用
相手の過失が100%であれば、車両修理期間または車両代替期間は代車費用として「レンタカー費用」が支払われます。
ただし、中古車を購入する場合、納車されるまでのすべての期間が対象となるわけではありません。相手保険会社からは代替相当期間として、おおよそ「2週間程度」の期間を提示されることが多いです。
新車の購入に必要な期間は一般的に1ヶ月程度ですが、中古車には「製造」が無いためです。
また「簡単ネット車査定(事故車対応)」というサイトもあるので、活用してみてください。
バイクの方は「バイクの一括査定」もあります。
誰しもが受け取ることができるお金
それは「自賠責保険の保険料」です。
車を運転するなら誰でも入る義務がある自賠責保険は、車検のときに保険料を一括して支払っていますよね。
だから車検前に事故で廃車にする場合、まだ期間が経過していない分の保険料を取り戻すことができます。
全損になったら、忘れずに手続きをしましょう。
自賠責保険の証書と印鑑・廃車を証明できる書類・本人確認書類・振込先がわかるものを持って保険会社に行けば、手続きをしてもらえます。
郵送でも手続き可能な場合が多いので、まずは電話で問い合わせましょう。
ただし、廃車にする際には「自動車リサイクル料」「解体費用」「抹消登録費用」等の費用がかかってしまいます。
そんな時は「事故車の一括査定」がおススメです。事故車の買取業者に買い取ってもう方がだんぜんお得です。
もらえるかもしれないお金
意見が分かれるのは「車の買替諸費用」です。
「買替諸費用」とは、車を買い替えたときにかかる登録費用や、ディーラーへの手数料など、諸々かかる費用のこと。
車が全損して買い替えるとき、これらの諸費用を支払ってもらえるのかが問題となります。
「事故をしなくても車はいつか買い替えるから」という理由で支払いを断る保険会社が多いですが、裁判ではこの買い替え諸費用が認められるケースもあります。
経済的全損か否かを判断するにあたって修理費用と比較すべきものは,被害車輌の時価額だけでなく,買替諸費用等を含めた全損害額と解すべき。
引用元:【東京地裁 平成16年4月22日判決 交民集37巻2号519頁】
その際に認められる可能性がある諸費用は、下記のものになります。
- 車検登録法定費用
- 車検手続き代行費用
- 車庫証明法定費用
- 車庫証明手続き代行費用
- 自動車取得税
- 納車費用
- 廃車・解体費用
- 残存車検費用
具体的な金額は「goo」などの大手中古車検索サイトで、全損になった車と同程度の車の「見積り書」を出してもらうと書かれています。
それを相手の保険会社に送って請求してみてください。
このやり方で認められることもあります。
逆に認められないものは下記の諸費用です。
- 自動車税
- 自賠責保険料
- 自動車重量税
そういえば結城さん、初めに「全損した車の時価額をアップさせる方法」があるって言ってましたけど、どんなやり方なんですか?
それじゃ紹介するわね。
これは知らない人が多いけど、誰でもできる簡単なやり方ですので ぜひ試してみてください!
車の時価額をアップさせるテクニック
インターネットで調べた中古車価格を提示する
全損と宣告されると早ければ当日、遅くても翌日には保険会社の担当者が時価額を提示してきます。
根拠はさきほどお話したレッドブックです。
さて、このレッドブック基準の時価額ですが、ほとんどの方が「納得できない」とおっしゃいます。
レッドブックにも掲載されていない低年式の車だと、新車の10%で査定されることが多いので、なおさらです。
被害者「あのう、この値段では同じような車を買うことはできないんです。どうにかアップできませんか?」
保険会社「そう言われましても何か根拠となるものがなければ無理ですね」
このような会話は日本全国で毎日繰り広げられています。
しかし、被害者のことを親身になって考えてあげる担当者であれば、内心「もう少しアップしてあげたいなあ、確かにこの値段では同程度の中古車は厳しいかも」と思っています。
そこで、被害者がやるべきことはこれです。
「私の車と同じグレードで、走行距離や年式も同じ車の販売価格を調べてみたのですが、これで検討してもらえないでしょうか」
こう言って、自分がインターネットで調べた中古車の一覧を提出してみましょう。
ネットでは保険会社が提示した時価額よりも、5万円から10万円ほど高いことが多くなっています。
「goo」など大手中古車検索サイトで調べれば、数多くの中古車がヒットします。
ポイントは、「同じグレード、同じぐらいの走行距離、同じ年式」という点です。
条件が違う高額な中古車たちを並べても、時価額アップにはつながりません。
条件が同一で、それが保険会社の提示よりも高額であれば、時価額が引き上げてもらえる可能性はかなり高くなります。
ただし、この時価額交渉のポイントは「担当者に親身になってもらうこと」です。
担当者も人間です。最初から喧嘩腰でやり取りをしていたら、
「こんなにひどい態度を取られているのに、なんで良くしてあげなきゃいけないんだろう」と思って簡単に時価額アップに応じてくれなくなります。
しかし、丁寧に朗らかに対応していれば「もう少し頑張ってみようかな」という気分になるので、対応はソフトにしてみましょうね。
彼らは「全損=揉める」と身構えているので、優しい対応を取られるとやる気を出してくれますよ。
事故車の売却価格を上乗せする方法
「全損になった車は保険会社に引き上げられるの?」でも説明しましたが、相手の対物保険で賠償してもらう場合、事故車の所有権は相手の保険会社にあります。
そのため、本来は相手の保険会社が引き上げることが可能ですが、実際には被害者が「処分してよ」と言わない限りは保険会社が引き上げることはありません。
法律的には、全損として時価額を支払えば、車は保険会社が引き上げ処分しても何ら問題はありませんが、実務上は行っていません。
そこで相手の保険会社にこちらで事故車を処分していい事を確認できたら、事故車を売却して売却価格を得ることができます。
「相手の対物保険の保険金」に「事故車の売却価格」を上乗せすれば、買い替えたい車の価格に届くかもしれません。
「事故車ってそもそも売れるの?」
と思われる方もいると思いますが、海外では事故車でも日本車はとても需要があるため買い取ってもらえます。
修理できないくらい破損がひどい事故車でも、パーツを抜き取って海外に販売します。
そのためまずはあなたの事故車がどのくらいの価値があるか査定してもらいましょう。
ここでのポイントは1社だけに査定してもらうのではなく、できるだけ多くの買取業者に査定をしてもらい、一番高い査定額を提示した業者に売るのがコツです。
「簡単ネット車査定(事故車対応)」というサイトもあるので、活用してみてください。
バイクの方は「バイクの一括査定」もあります。
慰謝料を増額させる
これは あなたが怪我をしている場合に使える方法です。
慰謝料を決める際に使われる基準は下記の3つです。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
それぞれ金額が異なり、多い順に並べると 『弁護士基準 > 任意保険基準 > 自賠責基準』となります。
保険会社が提示してくるのは自賠責基準か任意保険基準です。
そのため一番高い「弁護士基準」に切り替えるだけで慰謝料が増額できる可能性があります。
そういえば全損になった車って、その後どうなるんですか?
車両保険の保険金もらったり、相手に賠償してもらったりする場合でも自分のものなんですか?
状況によって保険会社に車を引き上げられたり、引き上げられなかったりします。
詳しくは「全損になった車は保険会社に引き上げられるの?」をご覧ください。
あと全損になっても思い入れのある車の場合、なんとか修理したい人もいると思うんですよね。
何かいい方法ってないですか?
そういった場合は、「全損した車を修理して乗り続ける方法」を参考にしてみて下さいね。
この方法で全損から復活した車を何台も見てきてます。
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